愛車の寿命を延ばすメンテナンス ~エンジンオイル編~

 

自動車にも、人間と同じく“寿命”があります。大切な愛車と長く付き合っていくには自動車のメンテナンスが必要不可欠です。その中でもエンジンオイルは劣化した状態が続くと、自動車の寿命を縮めてしまう恐れがあるため定期的に交換をしなければなりません。

そこで今回は、エンジンオイルの役割、交換方法についてご紹介したいと思います。

 

1.エンジンオイルの役割とは

 

まずは、自動車におけるエンジンオイルとはいったいどのようなものなのか、どのような役割を果たすのかを知り、基本的な知識を身につけておきましょう。

 

1-1.エンジンオイルは“血液”

 

エンジンオイルはその名の通りエンジンに使用するための油ですが、これは自動車にとって非常に重要な役割を担っており、人間でいう“血液”にあたります。そのため、エンジンオイルが劣化すると自動車も調子が悪くなってしまいます。

エンジンオイルが劣化した状態で使用を続けると不純物が溜まってしまい、燃費の悪化や加速力の低下など、エンジンの正常な性能を発揮できなくなってしまいます。

 

1-2.5つの役割

 

エンジンオイルには主に「潤滑」「冷却」「気密」「清浄分散」「防錆防食」の5つの役割があります。

 

「潤滑」

エンジンはシリンダーやピストンリングといった、多くの金属部品が集まって構成されています。エンジンオイルは、それぞれの金属部品が直接触れないように油膜を作ることによって摩擦を軽減し、エンジンをスムーズに動かしています。

また、こうすることによってエンジンで発生する力を無駄なく、効率的に伝達させることができます。

 

「冷却」

エンジン内部は摩擦熱の発生や燃料の燃焼によって約1000℃の高温になることもあります。エンジンオイルは、常にエンジン内各部を巡っており、その際にエンジンで発生した熱を奪うことによってエンジンを冷却しています。この働きによって、金属部品の焼き付けやエンジンのオーバーヒートなどを防いでいます。

また、エンジンオイルに蓄えられた熱は、オイルクーラーなどで冷却され、エンジンオイルが冷えるとまたエンジンへと送り出されます。

 

「気密」

エンジンは空気と燃料を混ぜた混合気という気体を圧縮し、点火して爆発させています。エンジン内は金属部品が集まって構成されていますが、それぞれの間にはどうしても隙間が出来てしまうので完全に密封ができません。そのため、エンジンオイルがシリンダーとピストンリングの間に入り込むことで隙間を埋め、圧縮した気体が漏れてしまわないように密封をしています。

 

「清浄分散」

エンジンが稼働すると、燃料を燃焼させたことによるススや、金属同士の摩擦による鉄粉といった不純物が発生します。このような不純物がエンジン内に溜まっていくとエンジンオイルの細い通り道を塞いでしまい、故障の原因となったり、エンジンの寿命を短くする要因となったりします。このようなエンジン内の汚れをエンジンオイル内に取り込むことによって、汚れが一つの箇所に固まらないようにしています。

 

「防錆防食」

燃料を燃焼させたり、エンジン内外の温度差による結露が起こったりすることによって水分が発生します。そういった水分や空気など、金属に錆を作る原因となるものに直接触れないようにエンジン内部をエンジンオイルで満たして金属面を保護しています。

また、劣化して酸性化したエンジンオイルを中和して腐食を防ぐという役割もあります。

 

以上のように、エンジンオイルは自動車にとってたくさんの非常に重要な役割を持っています。

 

2.エンジンオイルの交換方法

 

自動車にとってのエンジンオイルの重要性について理解を深めたところで、実際にエンジンオイルを交換してみましょう。

 

2-1.エンジンオイルの交換時期

 

主にロードサービスを行っているJAFでは次のように回答しています。

 

車種 交換のめやす シビアコンディション※
ガソリン車 1万5,000km、または1年 7,500km、または6ヵ月
軽自動車(ガソリン車) 1万5,000km、または1年 7,500km、または6ヵ月
ガソリンターボ車 5,000km、または6ヵ月 2,500km、または3ヵ月
軽自動車(ターボ車) 5,000km、または6ヵ月 2,500km、または3ヵ月
ディーゼル/
ディーゼルターボ車
1万km、または1年 6,000km、または6ヵ月

※シビアコンディション:悪路走行が多い、走行距離が多い、山道な上り下りの頻繁な走行など

出典:JAF http://www.jaf.or.jp/qa/mechanism/maintenance/08.htm

 

このように、車種や使用条件による違いはあるものの、1年に1回は交換することが望ましいといえます。

 

2-2.エンジンオイルの種類

 

自動車用のエンジンオイルは、主に3種類あります。一般的に、エンジンの種類によってエンジンオイルの種類も分けられ、それぞれに適したエンジンオイルを使用します。

 

4ストロークガソリンエンジン用オイル

現在は、通常「エンジンオイル」といえばこちらを指します。4ストロークエンジンとは、「吸気」「圧縮」「膨張」「排気」の4サイクルでクランクシャフトが1回転する仕組みのエンジンのことです。使用経過により性能が低下していくので、全量を交換するのが一般的な整備方法となります。

 

2ストロークガソリンエンジン用オイル

こちらのエンジンオイルは燃料とともに燃焼してしまうため、交換ではなく補充をするのが一般的な整備方法となります。近年では排出ガス規制により、ほとんどの自動車が4ストロークエンジンとなり、2ストロークエンジンを搭載する車種が無くなりつつあるので、こちらのエンジンオイルも一般的ではなくなってきています。

 

ディーゼルエンジン用オイル

ディーゼルエンジン用オイルは、ディーゼルエンジンに対応したエンジンオイルです。ガソリンエンジン用オイルと基本的に性能に違いはあまりないのですが、こちらには酸を中和させるためのアルカリ分が添加剤として多く含まれています。ディーゼルエンジン用オイルをガソリン車に使用しても重大な問題は無いのですが、ガソリンエンジン用オイルをディーゼル車に使用することは構造上、「リングスティック」という現象が起きてしまい、良くありません。

アメリカ発祥の、郊外や砂漠などでも入手できるように作られたガソリン車・ディーゼル車のどちらにも使用できる「ユニバーサルオイル」というエンジンオイルもあります。

 

上記の他に、ベースオイルによる分類方法もあります。こちらの分類方法では、化学合成油(シンセティック)・部分合成油(セミシンセティック)・鉱物油(ミネラル)の3種類に分けられます。

それぞれの特徴は以下の通りです。

 

化学合成油 鉱物油を化学分解して尚且つエンジン洗浄と環境を考えた添加剤を化学合成させた良質なオイル。成分や分子量を一定にしたもので、コストは高いがあらゆる条件化において安定した高性能を発揮します。
部分合成油 鉱物油に化学合成油あるいは水素化精製油を20%~30%混合したベースオイルで、経済性と性能を併せ持っているが、耐熱性能などは化学合成油には及ばない。
鉱物油 原油から精製されたもので、現在最も一般的に普及しているベースオイル。分子量などはバラバラで揃っていないため、組成が破壊され易い。

出典:OFT co., ltd. http://www.oft.jp/aboutoil/

 

この他にも潤滑性に大変優れたひまし油などの「植物油」がありますが、主にレースに用いられ、一般車にはほとんど使用されません。

 

2-3.エンジンオイルの規格

 

自動車用のエンジンオイルは、品質や粘度による、さまざまな規格によって定められています。

 

品質による規格

エンジンオイルの表記には、SJやCF-4といった表記があります。これは、アメリカ石油協会が定めたAPI規格という規格によるものです。

 

“S”で始まるエンジンオイルは、ガソリンエンジンオイル規格のものです。これはService stationとSpark ignition engineのイニシャルを取ったものです。その後に続くアルファベットはグレードを表しており、Aから順番にグレードが高くなっていきます。こちらの最上位の規格は、SN/RC(Resource Conserving)となっています(2016年11月現在)。

 

対して“C”で始まるエンジンオイルは、ディーゼルエンジンオイル規格のものです。これはCommercial とCompression ignition engineのイニシャルを取ったものです。こちらも、後に続くアルファベットはグレードを表しているのですが、CF以降は4サイクル用であることを示すCF-4のように-4が付いています。

現在の最上位規格はCJ-4ですが、次期規格としてCK-4、それとは別に省燃費規格としてFA-4が設定される予定です。

 

API規格に正式に申請し、非常に厳しい審査をパスしたエンジンオイルには「ドーナツマーク」が表示されています。また、API規格とは別に国際潤滑油標準化認定委員会が定めた基準をパスしたエンジンオイルには「スターバーストマーク」と呼ばれる証明が表示されています。

ドーナツマーク

出典:みんカラ http://minkara.carview.co.jp/userid/851455/blog/24720892/
出典:みんカラ http://minkara.carview.co.jp/userid/851455/blog/24720892/

スターバーストマーク

出典:miten http://www.miten.jp/miten/modules/popnupblog/index.php?postid=32
出典:miten http://www.miten.jp/miten/modules/popnupblog/index.php?postid=32

 

粘度による規格

エンジンオイルのパッケージには、米国自動車技術者協会が定めたSAE粘度という粘度に関する表示もあり、シングルグレードとマルチグレードに分けることができます。

 

  • シングルグレード

こちらは、SAE30のように表記され、使用可能な温度の範囲が狭く、季節によって種類を使い分けなくてはならないエンジンオイルです。そのため、気温の変化があまりない地域であったり、ドラッグレースや工業用であったりと限られた条件の下で使用されます。

ただ、マルチグレードのエンジンオイルが無かった時代のシングルグレード指定の自動車にマルチグレードのエンジンオイルを使用するとオイル上がりやオイル下がりなどの不具合が発生してしまう可能性があるので、注意が必要です。

 

  • マルチグレード

こちらは、シングルグレードに比べて使用可能な温度の範囲が広く、基本的に10W-30のように表記されます。Wは、登記用を意味するWinterの頭文字で、左の数字は低温粘度といい、低い数字になるほど低温時にも固まらず、柔らかさを保てるエンジンオイルであることを意味しています。

右の数字は、高温粘度といい、逆に高い数字になるほど高温時に溶けることなく粘度を保つことのできるエンジンオイルであることを意味しています。この2つの数字の幅が大きいほど、寒暖問わずあらゆる走行条件に対応できるエンジンオイルであるということです。

 

2-4.エンジンオイルのチェック方法

 

エンジンオイル量が適正に保たれているかどうかは、自分で判断することが可能です。エンジンオイルのチェック方法をみていきましょう。

参考:カーライフサポートネット http://www.carlifesupport.net/maintenance%20kiso_oillevelgauge.html

 

  • 1.自動車を平らな場所に停める

正確な計測を行うため、自動車を傾斜のない平坦な場所に停車させましょう。また、エンジンは必ず停止させておきましょう。

 

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  • 2.ボンネットを開けてオイルレベルゲージをみつける

オイルレベルゲージはオレンジ色など、目立つ色をしています。手の届きやすい位置にあるため、すぐに見つかることでしょう。

 

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  • 3.オイルレベルゲージを白い布などで挟みながら引き抜く

オイルレベルゲージを引き抜く際に白い布やキッチンペーパーなどで挟むことで余分なエンジンオイルを取り除くことができます。また、エンジンルームや他のパーツにエンジンオイルをこぼさないようにしましょう。

 

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  • 4.オイルレベルゲージのラインをみてオイル量を確認する

オイルレベルゲージを引き抜いたら、エンジンオイルが付着している部分と付着していない部分の境界を見ましょう。こちらが現在のオイルレベルです。

 

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オイルレベルゲージには2本のラインがあり、それぞれ上限と下限を意味しているのですが、その間にオイルレベルがあれば正常ということになります。オイルレベルが上限を超えていたらエンジンオイルの入れ過ぎ、逆に下限を下回っていたらエンジンオイルは不足しています。

車種によってはラインではなく、穴などの印になっている場合もあります。

 

  • 5.オイルレベルゲージを元に戻し、ボンネットを閉める

エンジンオイルの量の確認が終わったらオイルレベルゲージを元の状態に戻しましょう。このとき、オイル漏れを防ぐためにオイルレベルゲージは根元までしっかり差し込みましょう。次回のオイルレベルの点検の際に、正確な計測をするためにもオイルレベルゲージをしっかり差し込むことは重要です。

 

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そこまで難しい作業ではないので、1ヶ月に1回など、時々点検をしてあげると自動車にとって適切なメンテナンスができます。

 

まとめ

 

今回は自動車の寿命を延ばすための、エンジンオイルのメンテナンス方法をご紹介しました。

エンジンオイルは、自動車にとって非常に重量な役割を果たしており、定期的に交換が必要なものなので、「取り替えるものだなんて知らなかった!」という方は一度愛車のエンジンオイルの量・色を確認してみましょう。